模試の復習とは何をすることか? 模試復習の決定版

 

模試の弱点発見機能
模試の機能のひとつに「弱点発見」という機能があることは、以前のツイートでも言及したとおりです。今日はこれについて詳述し、その機能を存分に活かすような具体的な復習の方法についてお話します。

なぜ模試には弱点発見の機能があるのでしょうか?その理由は以下のとおり。良質の模試であれば、全分野から偏りなく出題されるから、です。したがって、分野ごとの得点の偏りを見るだけで、自分が特に苦手とする分野が一目でわかる、というロジックです。これは多くの方に納得して頂けるでしょう。


「模試の復習」とは何をすることか?
弱点が見つかった後、それをどう活かすか、が問題となります。ここではいわゆる「模試の復習」というものについて考えてみたいと思います。みなさんは、どのような方法で模試の復習を行っていますか?

恐らく多くの受験生は次の2パターンに分かれるはずです。

1)そもそも、復習はせず得点に一喜一憂する。
2)間違えた問題は、解答を見ながら解き直す。

いかがでしょうか?どちらかではありませんか?

「一喜一憂パターン」について
まず、1)のパターンについて言及します。
1)の方は、模試の目的を「腕試し」と割り切っている受験生でしょう。すなわち、「模試は現在の成績を測るツールであって、それ自体得点を上げるツールではない」という考えを持っていることになります。


模試には確かに、自分の実力を計測できる面がありますが、それは一面に過ぎません。せっかく経済的・時間的コストを支払い、模試を受けるのですから、模試のその他の効用についても利用しつくすべきだと僕は考えます。その他の効用については後述します。


「一見効果的」パターン
次に2)のタイプです。
2)のタイプの人は模試を「得点を上げるツール」として認識できている点で1)とは一線を画しています。とはいえ、やり方によってはあまり効率的でない可能性があります。受験生が陥りやすい模試の非効率的な復習方法を例に挙げ、効果的な模試の利用法について考えましょう。


罠その1「すべての問題につき完璧に理解しようとする」
「すべての問題について復習をする」という復習方法は、 特に真面目な受験生に多い気がしますが、多くの場合非効率な復習方法です。というのも、模試の問題は分野だけでなく、難易度も幅広いものだからです。


そうでなければ、妥当性・信頼性のある学力について判断ができないからです。学力の指標となる偏差値が数値としてわかる理由は、得点にばらつきがあるからです。そのばらつきを作っているのは、他ならぬ出題難易度の幅広さ、です。


したがって、模試の問題にはやさしい問題も、難しい問題もあります。ここまではみなさんも納得してくださるでしょう。問題はこの次です。すべての問題を復習しようという方は、なぜ、自分の現状と比較してかなり難しい問題についても理解ができると思うのでしょうか?


結論を行ってしまえば、あなたのレベルからすれば難しすぎる問題は模試で出題される可能性は十分あります。そのような問題についてまで無理して復習をすることは、かなりのコストを費やすことになります。そもそも、「復習」というのは以前に学習を行っていた人だけができるはずです。


にもかかわらず、難しい問題は、「模試で見た」というだけで、復習の前提になることはまずないでしょう。復習時には、こういった問題に時間をかけるべきではなく、自分がやったことのあるはずの問題に時間を割くことが効果的です。やったことのない問題は、「復習」できないのですから。


罠2「模試の問題『のみ』を完璧にしようとする」
模試は弱点発見に役立ちますが、その意味を履き違えてはいけません。多くの受験生は、模試の問題とその答えのみを覚え、復習したつもりになっています。しかし、それでは「弱点発見」という模試の機能を十分に生かせません。

というのも、そうして覚えた問題と解答は、応用性のない単なる断片的な知識に過ぎないからです。これを僕は一問一答的な模試の復習と呼んでいます。確かに、模試と同じ問題が出れば次は満点がとれるかもしれない。しかし、あなたの志望大学でそれとまったく同じ問題が出る確率はどの程度でしょうか?


英数国について言えば、ほぼゼロパーセントでしょう。それは当たり前です。したがって、模試の問題と解答を一問一答的に覚えたとしてもあまり意味のあることではありません。では、罠1、2を踏まえどのように模試を受験し、復習すべきなのか考えてみましょう。


「すべての問題を復習する」のをやめる
あなたの復習すべき問題は決してすべてではありません。ある程度選別しておくべきです。模試で出題される問題には恐らく次のようなものがあります。

1) やったことがあり、自信を持って解ける
2) 見たことがあるが、思い出せない
3) 見たことも聞いたこともない

大まかにこの3つに分類ができるはずです。このうち、どの問題を復習することで成績が伸びるでしょうか?

一番効果的なのは2)の見たことはあるが思い出せない問題、でしょう。これの復習を最も重視すべきです。次に1)が本当に合っているのかの確認をします。もし誤解が正せたのであれば有用であったと評価できます。さて、3)についてはどうでしょうか?

もうおわかりだと思いますが、3)についてまで復習する理由はほとんどありません。そもそもその問題には触れたことがないのだから、おそらく今やっても理解することはできないか、相当な時間がかかるはずです。何度も言いますが、やったことのない問題について復習することはできないのです。


普段の学習が進む中で、その問題が解けるだけの学力を身につけてから再チャレンジをすべきでしょう。どうしても真面目な受験生はすべての問題を復習したくなりがちですが、このような取捨選択はコストの面で合理的であると思います。


こうした効率の良い復習のために、模試受験の際には、問題を分類し、類型ごとにマークをつけておくとよいと思います。例えば1)は丸、2)は☆、3)はお手上げの意味を込めて「手」などです。これにより、かなり効率よく復習ができるはずです。

ここまでが、模試の問題「すべて」について復習を行うことの非効率性についてです。


「模試の問題だけを復習する」のをやめる
次に、模試の問題「だけ」の復習の非効率性についてお話します。

一見、これらふたつの命題は相反するようにみえるかもしれません。しかしながら、効果的な学習のためには、模試の問題「すべて」の復習をせず、模試の問題「だけ」の復習をしないことが必要です。前者については以前説明しましたので、この主張の後者について詳しくお話したいと思います。

模試の問題「だけ」の復習とはいったいどのようなものでしょうか?これは多くの受験生が陥りがちな罠のひとつです。次のような例を挙げて考えてみましょう。


<受験生の陥りがちな罠>

問題「ギリシア民主制に多大な影響を及ぼした前500年に始めるアケメネス朝とギリシアのポリスの戦争は何か?」

受験生「これ、わかんなかったなー。復習、復習。お、『ペルシア戦争』か!忘れてたぜ。前500年、ペルシア戦争、っと。復習終わり」


<受験生の陥りがちな罠(数学編)>

問題「x4- 5y4 = 2 を満たすような整数 x,y は存在しないことを証明せよ」

受験生「これさっぱりだった。解答見ながら復習だ!なるほど、式変形の後、5で割った余りに着目するのかー。なるほどね。よし、次は解けるぞ。復習終わり!」


いかかでしょうか? こういった復習を行っている受験生は多いのではないでしょうか?
もちろん、模試に出てきた問題で、自分の解けるレベルにあるものは、次回出題された際に解ける必要があります。しかし、それだけで学習を終えることが果たして合理的ないしは効率的でしょうか?このことについて考えてみたいと思います。


一問一答的復習では、本番での点数は上がらない
適切な模試の復習方法は、間違えた問題の1問1答的な復習ではありません。そもそもそれは復習とは呼びがたいものです。さきほど挙げた例の架空の受験生達が行っているものがそれです。これらの問題はなんでしょうか。
1問1答的な模試の復習がほぼ無意味なのは、「その問題」しか解けないからです。あなたが受験する大学で、センター試験で、「ペリクレス」を導きだす問題が出る確率はどの程度ですか?


あなたの受験する大学で、「「x4 - 5y4 = 2 を満たすような整数 x,y は存在しないことを証明せよ」という問題が出る確率はいくつですか?おそらくは天文学的な確率でしょう。ほぼ皆無です。


模試の有用な機能の中で、「弱点発見」という機能があることは以前お話した通りです。あなたが自分の弱点を「ペリクレス」や、「x4 - 5y4 = 2 を満たすような整数 x,y は存在しないことの証明」だと捉えても特に意味はありません。一つ上の次元でこれらの問題を捉えましょう。


つまり、間違えたものが含まれる分野の学習をすべて行ってこそ復習といえるのです。例えば「ペリクレス」を間違えた受験生であれば、古代ギリシア全体が苦手である可能性が非常に高い。入試で「ペリクレス」が出題される可能性は極めて低いが、古代ギリシアから問題が出題される可能性はかなり高い。


模試の復習とはかくあるべき
以上のように、間違えた「分野全体」の復習こそが、模試における復習だと言えます。普段の学習で、全範囲を対象とするチェックを行うことは非常に難しいです。模試という全範囲から出題される問題を利用して、自らの弱点「分野」を発見し、その分野についてはやってきたことをすべて復習しましよう。


先程の数学の問題についても同様です。あの問題を見て解法が浮かばなかった場合、「整数問題」の基本的な知識が欠けている可能性があります。弱点がこのように把握できたならば、「整数の分野」全体を復習することの意義はおわかりかと思います。


仮に、「x4 - 5y4 = 2 を満たすような整数 x,y は存在しないことを証明せよ」だけ解けるようになっても、次回他の整数問題が出題されてもやはり解けません。一方で、この問題を間違えたことから、「整数問題全体」の学習を行った受験生はどうでしょうか?もうおわかりですね。


間違えた問題「だけ」の1問1答的な復習は復習とは呼べません。最も効果的な復習は、間違えたものを含む「分野すべて」の学習です。模試の「弱点発見」の機能を最も活かせるのもこの復習方法でしょう。


まとめ

以上より、模試の復習について言えることは、次の2点です。
1 模試の問題「すべて」を復習するな。
2 模試の問題「だけ」を復習するな。


今回の模試を利用して、この復習方法を実践してみてください。
大きく飛躍するためのツールとして模試が利用できるようになるでしょう。模試の復習とは何をすることが?