勉強法のお勉強に役立つ書籍まとめ

 

■ 現場の方からのご質問

 

@hikari_juku おはようございます。福岡の中高一貫校で理科の指導をしているものです。科学的な教授方法の追求という信念や、普段のツイートにはいつもはっとさせられ、尊敬の念を抱いております。
Sat Nov 19 23:45:11 via YoruFukurou
furuminium
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@hikari_juku 私は理学部の卒業でして、教科の知識には自信をもって取り組んでいるのですが、光塾さんのブログやツイートを拝見して、教育学や心理学の知識をもっと身につけたいと痛感致しました。
Sat Nov 19 23:45:22 via YoruFukurou
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@hikari_juku そこで、もしよろしければ教育現場で実践するにあたって教育学や心理学を身につけるのに良い本をご存知でしたらご紹介いただけないでしょうか。突然の一方的な質問になりましたがお答えいただけましたら幸いです。
Sat Nov 19 23:45:34 via YoruFukurou
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以上のような質問を頂きました。ありがとうございます。
こうして現場の方からコメントを頂けることは大変嬉しく思います。
どうしてもこの業界は、理論 vs 実践の二項対立に陥りがちですから。
互いに良い面は取り入れつつ、児童・生徒のために高め合うことができたら素敵だと思います。


■ 心理学に基づいた方法論として

以下僕の推薦するテキストを、簡単なレビューをつけて紹介します。
主に現場で指導される方向けにご紹介していますが、塾で働く大学生や、受験生にも有益な部分がいくつかあるでしょう。
上から順に読んでいかれると、スムーズにこの学問領域が理解できるように配置してありますが、興味のある部分から読んでもらっても結構です。

 

・市川伸一『勉強法が変わる本』

勉強法が変わる本―心理学からのアドバイス (岩波ジュニア新書)



勉強法が変わる本―心理学からのアドバイス (岩波ジュニア新書)

 

中高生向けに書かれた本だが、心理学の知見と具体的な学習とを上手に結びつけてくれる。
受験生も、世に溢れる勉強法の本よりもまず、この本を読もう。


・市川伸一『学習と教育の心理学』

学習と教育の心理学 増補版 (現代心理学入門 3)

学習と教育の心理学 増補版 (現代心理学入門 3)



学習心理学テキストのスタンダード。
発展的な内容は含まれていないが、全体像の把握には適している。良書。

 

・山内光哉/春木豊『グラフィック学習心理学ー行動と認知』

グラフィック学習心理学―行動と認知 (Graphic text book)



グラフィック学習心理学―行動と認知 (Graphic text book)

 

上記『学習と教育の心理学』より発展的な内容を収録。
古典的な行動主義心理学を中心に解説している。
図解が豊富で、実験の方法等もわかりやすい。

 

・箱田裕司他『認知心理学New Liberal Arts Selection)』

認知心理学 (New Liberal Arts Selection)

 

認知心理学 (New Liberal Arts Selection)

認知心理学の概説書。
これ1冊があれば、大抵のことは調べられる。
お勧めの利用法は、通して1回読み、教育の現場の中でひっかかることはないかと発問し続けること。つまり、アンテナの感度を高めるのに利用する。
記憶、理解、問題解決の章は特に注意深く読んでおくと、すぐにひっかかってくれるだろう。

 

三宮真智子・編著『メタ認知 学習力を支える高次認知機能』

メタ認知―学習力を支える高次認知機能



メタ認知―学習力を支える高次認知機能

 

学習に不可欠な認知に関する認知である「メタ認知」について12の章で概説。
テストだけの人間になってしまうかどうかは、このメタ認知にかかっているといっても過言ではない。
ちなみに僕が自分の授業で最も重視している点はここ。
理解するとはどういうことか、知識を獲得するとはどういうことか、記憶をしているとはどういうことか、これらの発問を生徒に主体的に行わせるヒントになるはず。


■ 理論と実践の狭間

以上、簡単な本のレビューでした。

実践における理論の役割は批判可能性と一般性の付与にあるように思われます。

経験(憶測?)のみに基づく指導にありがちなのは、一方で「俺の言うとおりにやらなかったから落ちたのだ」言い、他方で「俺の言うとおりにやっても落ちたのは、お前の努力が足りなかったからだ」という言明です。


このような指導の問題点は、未来永劫自己批判がなされない点にあります。
ポパーを引くまでもなく、反証可能性のない理論はもはや科学的な理論ではありません。


上記のテキストに記載された実験観察の結果帰納された理論は、現場で培ったノウハウに、見落としていた切り口を提供すると同時に、そのような現場の経験に一般性という正当性を付与するものです。

一般性という性質は、未知の生徒や問題を相手にする際に「勘所」として働くものです。
問題解決は、おそらく誰しもが一般から特殊へという順序を辿ると思いますが、受験業界でも具体的個人が提案した「特殊解」を突如適用するのではなく、実証されたある程度の一般性を持った解をまず適用してみようとすることで、問題点が明確になるはずです。

この点、受験業界は特殊解ばかりですから、いつまで経っても自分に合った学習法というものが見えづらくなっているように思えます。
そうではなく、まず教育心理学の膨大な蓄積を利用してみようとすることは、このあたりの問題を一定程度クリアにするはずです。
一般解を適用後に、残った問題については特殊な解を自分で作ってしまえばいい。
このようなプロセスが最もコストが小さく、万人に推奨できる指導法であると僕は確信し実践しています。

 

参考になれば幸いです。