特権としての傾向対策

今日の授業から
先ほどまで生徒と授業でした。 その子が2月から頑張って、ついに今日からセンター対策を始めることとなりました。教科は数学。


傾向対策に潜む罠
数学が苦手な人について考えましょう。得意な人はその人の気持ちになって。センター試験のみを受験する場合、本屋さんでどのような本を買うでしょうか? おそらく、「センター対策」と書かれた本を選ぶはずです。

なるほど、目標がセンター試験で高得点を取ることであるわけですから、そのための手段として「センター対策」と銘打った参考書を利用することは、一見合理的なように見えます。

しかし、この発想には大きな罠が潜んでいます。次のような例を考えてみましょう。 例えば、あなたが東大志望の高1生だったなら、本屋さんで買う本は「東大対策」と書かれた本や東大の過去問でしょうか?この例はやや妙ではないでしょうか?

お分かりのとおり、高1生がなすべきことは、授業を通じた教科書収録問題の習得であって、東大に適応した対策ではありません。なぜかと言えば、彼には東大対策をするだけの前提学力が欠けているからです。僕のツイートやブログをご覧の方は納得して頂けると思います。


やるべきことは
彼が今行うべきことは、東大の過去問ではなく、基礎から学力を淡々と積み上げていくことです。そして、ついに時が来て過去問を学習して得られるだけの学力がついたなら、過去問をやればいい。


傾向対策の本質
この例からわかることはなんでしょうか? 話は簡単。「傾向対策は、ゴールには成り得ても、スタートには成り得ない」ということです。 基礎を大切にし、体力をつけ、十分基本の動きに習熟した者だけが、傾向対策を行うことができるのです。

傾向対策の本質は、「習熟した基礎基本を、出題者の求めている形に変えること」だと僕は考えています。したがって、変形させる基礎基本を欠いている人が「〇〇対策」と銘打った教材を行っても学習効果は大変小さいものとなります。


基礎基本を徹底する
餅は餅屋。傾向対策を目的とした教材で基礎基本を学ぶより、基礎基本に習熟することを目的とした教材で基礎基本を学んだほうが遥かに合理的でしょう。


「過去問やっとかなきゃいけない病」
夏になると毎年現れるのが、「過去問やっとかなきゃいけない病」です。そんなのは思い込みです。あなたはあなたが今やるべきことを淡々と行いましょう。十分基礎基本が身について、それを得点に変える時期だと思えば過去問の学習を行えばいいし、そうでないなら基本に習熟しなさいな。


傾向対策は特権だ
今日授業を行った彼女は、4ヶ月必死で数学の基礎基本に習熟してくれました。年明け頃には因数分解ってなんだっけ?と言いつつ、中学校のドリルを学習していた彼女です。そして指導を開始してからも小学生用の100マス計算を利用した本当に簡単な四則演算も行っていたのです。そのレベルをとにかく徹底しました。

だから、今日から傾向対策を行える。今までの学んだ基本的な考え方が、センター用に洗練されていき、面白いほど点が取れる。傾向対策は、基礎基本に手を抜かなかった人の特権でありご褒美なのです。

基礎基本が自分は不十分だ!と思った人は、傾向対策にはまだ早い。 デザートは最後にとっておくんだ。周りの人がメインディッシュを残してデザートを食べていても、君はしっかり他の料理を食べるんだ。いつか口にできる甘い幸福を楽しみに、今は苦い野菜も全部、食べるんだ。

苦い野菜を食べずに、デザートを食べてしまったら。野菜の不足がわかっていても、その甘みから抜け出せない。傾向対策は基礎基本を徹底した人には幸福を、それを飛ばした人には幻想を与える。幻想は点数を与えないぜ。与えるのは「やった気」だけだ。

以上、傾向対策についてでした。 過去問や「〇〇対策」をやって点数が上がらないなら、前提学力を疑い、必要な学習を補ってみてください。教科書や授業のノートの復習をするのもいいし、僕のブログの記事を参考にするのもよいでしょう。しっかりと基礎基本の拡充を行い、彼女のように「特権」としての傾向対策を行いましょ!