模試の分析の方法

 

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※許可を得た上で転載しています。

 


志望校による、という点はさておいて、模試の成績をどう分析するかについて書いておく必要があると思います。

生徒の実例

僕が3月から指導を開始した去年度の生徒は、5月の河合マークで6割も取れていませんでした。
「低い!」と思うかもしれません。しかし、彼は早稲田大学に「英語で」合格しました。
当時、センター英語で8割を取れている友人は多くいたそうです。
しかし、友人たちが成し得なかった早稲田大学合格を彼は「英語で」果たした。
いったい何があったのでしょうか?


点数の取り方を分析する。

彼の英語の点数の内訳を大雑把ではありますが、分析してみます。


第1問 発音・アクセント→5割程度

第2問 文法・イディオム等→9割

第3問~第6問 長文→5割程度

 

ここから何を読み取るべきでしょうか。


やってきた学習と比較する

模試において重要なことは総合点でしょうか?
例えば、英語で8割とれました!と言ったとき、その8割はどのような意味をもつのでしょうか?
この辺りを少し詰める必要があります。

この生徒は、3月から模試までの2ヶ月弱、僕と一緒に行ったことは中学英語の復習と文法学習の徹底のみです。
つまり、解釈や長文学習はまったく行っていない。このことを踏まえて模試の結果を考える必要があります。

この生徒の点数の取り方を考えてみましょう。
まず、発音・アクセントと長文について。

これらの問題については、一切対策を行っていません。
発音・アクセントは基本的に、単語帳から学ぶべきですが、彼は当時、発音・アクセントに注意をした単語帳の利用をしなかった。したがって、ここの点数は「マグレ」です。

次に、長文問題。
僕の体系では、長文の学習は、文法と解釈の後、ということになります。普通の国公立大学早慶あたりを狙う生徒であれば、夏以降の学習になることがほとんどです。
お分かりのとおり、3月に指導を始めてから、僕は彼に一切長文問題を与えていません。ましてや、センター試験の傾向対策も一切行っていません。
したがって、発音・アクセント同様、長文での点数はやはり「マグレ」です。


一方、文法問題についてはどうでしょうか?
全体の点数のみならず、間違えた問題についても分析を行います。
彼が落とした問題は、文法問題ではなく、イディオムの問題です。
つまり、学習していない部分。

他方で、9割の点数がとれた部分はすべて学習を行った問題です。
マグレ当たりでないことは、彼から「自信を持って解けた」という感想をもらったことからも明らかです。
僕たちは、ここに大いに着目する必要があります。

 


再現可能性のある点数にしか意味はない

「マグレ」という言葉が気になるのであれば、次のように捉えてください。
つまり、原因のわからない結果には再現可能性がない、ということです。

僕の生徒は、適切な文法学習を行いました。
その結果、適切な学習を行った文法問題はすべて正解することができたのです。
これは、原因と結果の関係で結ぶことができます。つまり、因果関係を認めることができるのです。
そうだとすると、原因が同じであれば、次も同じような結果を得ることができるでしょう。
それこそが因果関係です。


一方、僕の生徒の長文の点数について考えます。
長文という分野で得た結果である5割の点数につき、原因を特定することができるでしょうか?
原因となった学習を特定し、それと5割の点数を因果関係で結ぶことができるでしょうか?
答えは、否、です。
彼は長文に向けた学習を一切していない。したがって、ここで得られた5割は出どころ不明の5割、なのです。

出どころ不明の点数に、価値はあるでしょうか?
僕らは出どころ不明の点数を当てにして、志望校を選択し、そして入試本番の長文問題を解くのでしょうか?
そんな危険な賭けはできないはずです。

なぜ点数がとれたか合理的な説明ができない。
その点数に再現可能性はありません。
仮に模試で8割がとれたとしても、原因が特定できない、再現可能性のない点数であれば、本番で8割を切ることは大いに有り得ることでしょう。

彼の友人たちが、第一志望とする早稲田大学に不合格となったのは、この点にひとつの理由があると考えられます。


再現可能性のある点数を

僕の去年度の生徒は、5月の時点で、確かに総合点では友人たちに大いに差をつけられていました。
しかし、具に観察をしてみると、彼は確固とした得点を、本番でも死守可能な得点をとっていたことがわかります。

この後、彼は解釈を学び、長文学習を行います。
そして、ひと通り簡単な長文を読み終えた夏の模試では8割を超えます。英文法に基づいた長文の読み方がわかり、かつ読み慣れが生まれるととれる得点です。
センター利用のために、高得点が必要だったため、センター試験の傾向対策を授業で行いました。
直前にほんの僅かに傾向対策を行った結果、過去問では9割を切ることがなくなりました。
結果、本番では2ミスで188点、となりました。

彼の点数は安定しています。
やってきた学習と、点数がおおよそ一対一で結びついていることがおわかりでしょうか?
これこそがまさに、再現可能性のある点数の取り方です。


当然のことですが、彼のみならず、僕の生徒は毎年同じような点数の取り方をし、同じように志望校合格を果たしています。
それは、行ってきた学習と現れた点数の因果関係を徹底的に分析したからです。
繰り返しになりますが、つまり、再現可能性があるのです。


今年度生徒の実例

今年の生徒の様子も何人か記しておきましょう。


・2月から指導開始の国公立大学志望のNさん
やったこと
・中学英語の復習と、主要分野の英文法問題(名詞・形容詞・副詞・冠詞等の品詞や省略・倒置・強調等の特殊構文については扱わない)
・授業では分野ごとの体系と、英文法全体の体系を意識して理解させる。

模試の成績(河合マーク)
第2問について。
イディオムを除く純粋な文法問題につき、解けなかったものは2問のみ。
その他はすべて根拠をもって解答し、また解けなかったものについて自らの知識を問題と結びつけることができた。


・4月から指導開始の国公立大学志望(文系)のSさん
やったこと
・簡単な文法問題集を1冊と確認用により簡単なものをもう1冊。
 ・授業では特につまずきやすい分野について体系的な理解を促す。

模試の成績(河合マーク)
第2問について。
イディオムを除く純粋な文法問題は、すべて根拠をもって解答する。


・3月から指導開始の早稲田大学志望のSくん
やったこと
 ・中学英語の復習と、体系的な理解の促進。
 ・簡単な文法問題集を1冊。

模試の成績(代ゼミマーク)
第2問について。
整序英作問題で1題ミスするも、その他文法問題については根拠を持って完答。
そのミスについても、英文法全体の体系と結びつけることができた。

 

以上です。


模試の結果と行ってきた学習の因果関係を考える


模試の総合点で一喜一憂していませんか?
喜んだその点数の出どころはどこにあるのでしょう?
それに明確に答えられなければ、次回の模試、ないし入試本番で同様の点数が取れるとは言えません。


現在僕は高卒生を3人教えていますが、その全員がやってきた学習に見合った成績をとっています。

「これをやれば、これが伸びる」
僕の受験における学習の体系は、このような因果関係を持っています。

したがって、どの学習が成績に影響を与えたのかが明確です。
そしてそれは人によって異なるものではないでしょう。

だからこそ、誰がやっても(努力さえすれば)同じように成績が伸びるのです。
これが、再現可能性の意味です。

 

彼らはこの先、英文解釈、長文学習についても同様に、やったところはやった分だけ成績を伸ばしていくでしょう。
学習という原因と、成績の向上という結果が一対一にリンクした学習方法をとっているからです。


この話を参考にし、自分の学習と模試の成績が明確に結び付けられるかどうか、一考してみてください。
根拠のない点数の取り方、ないし失い方にはほとんど意味がありません。

やっていないから、何ができていないのか。

こういった視点から、点数に囚われないで模試の成績を分析し、日々の学習にフィードバックさせましょう。